真夏の能郷白山   Mt.Nogo-Hakusan on a midsummer day

 美濃と越前の境界の中央分水嶺に位置し、越美山地(両白山地西部)の、そして奥美濃(揖斐川水系)の最高峰ですが、深田百名山になりそこねた山というあまりありがたくないキャッチフレーズもあわせもつ名山です。標高は1617m。春遅く、名古屋市や岐阜市から北に最後まで白く輝く山として眺めることができます。この山は温見峠からの往復も可能ですが、このとき岐阜側からは国道157号線が通行止めとなっており、能郷集落側からの歴史ある登山ルートで登ってみました。登ったのは真夏の8月15日。快晴で灼熱の太陽が照りつける日でした。長いコースと日陰の少ない登山道。この日の一番の敵は日射でした。おまけに草の多い道もけっこうこたえました。だいたい、この山の夏山ベストシーズンは梅雨前か、秋分を過ぎてからに分かれているようですが、諸事情あって真夏の登山となりました。写真タイトル横の番号は、最後のルートマップに対応しています。

能郷白山・山頂の能郷白山神社奥宮の祠からの眺望へ
登山道で見た花へ
ルートマップへ

山行写真
撮影日:2015/8/15 Photo by Minaphm, All Rights Reserved.
撮影機材:ボディー: Pentax K-7、レンズ: SMC Pentax DA18-250mm F3.5



能郷谷の林道ゲート P@
少し古いガイドブックでは、登山口まで車で入れることになっていますが、けっこう手前で林道は荒れ、その手前にゲートができています。
この少し手前に駐車して、歩きはじめました。標高は382mほど。登山口が716mほどなので、330mあまりを林道(跡)で稼がないといけません。




青空 @
この前の晩は近くのうすずみ温泉の道の駅で車中泊しましたが、星が降るようでした。ちょうどペルセウス流星群で
ほんとにいくつか降っていましたが・・・。少し雲がありますが、今日も快晴のようです。




荒れる林道 上A、下Bあたり
ゲートの先の林道の様子です。上はまだ舗装道のある区間です。でも、あちこちで岩石が流れてきて、とても車では通れません。その先、
Bの手前でついに橋の流出箇所があり、その後はこんな道(下)が続きました。草もぼうぼうで、よけながら進みます。その後再び舗装道になります。




登山口 C
ゲートからほぼ1時間、3.5kmほど歩いて、ようやく登山口Cです。林道が右にヘアピンを切るところ。
昔は駐車場だった小さな広場があり、先の白い棒には「能郷白山登山道入口」と書かれています。標高は716m。




渡渉ポイント D
すぐ先で、能郷谷の本流を渡渉します。この日は水が多いので心配していましたが、岩伝いに
問題なく渡れました。もしここが渡れなかったら林道を登ろうかとも考えていましたが・・・。




いきなりの急登 E
流れを渡ると、草をかき分ける道が少しあって、すぐ右上に登ります。その先は急な登りが続きます。



急登が続く E-F間
小さな尾根の上をどんどんと登っていきます。すぐに、大きなブナも出てきました。それにしても急登です。



「@合目」
あるガイド本によると、もともとこのルートには「合目表示」があり、たぶんその名残がこの看板の@なのでしょう。つまりここは@合目。
入口(登山口)から距離にして500m、ちょうど30分ほど登ってきて全距離が4800mだから、まあたしかにルートの1/10近いところです。



林道と出合う F
約45分登ってきました。やっと林道に出合いました。でも林道は草ぼうぼうで廃道状態。もしこれを
歩いてたら、途中であきらめていたかもしれません。前の白い看板ですぐ林道から離れます。




能郷白山の南東稜線に出る G
小尾根の登りがやっと終わって、ここGで能郷白山から前山、さらに南東に雷倉方面に続く南東稜に上がりました。少し傾斜も緩くなり、ほっと一息。



「A合目」
「A合目」は、Gからほんの少し登ったところにありました。標高は1160m。でも山頂までまだ
3605mもある・・。もう一時間半歩いてきたのに距離的にはまだ1/4しか来てません。




見晴らしの稜線 H
Hあたりです。見晴らしのきく稜線です。でも、この日は日射がきつくて、これが続くのは決してありがたくない状態でした。
この写真は南方向に南東稜を見ています。左が能郷谷。右が白谷で、その先に徳山ダム湖の一部が見えてきました。
南東稜の先にある山は、少し左に振って三角形の雷倉1169m、右に振って花房山1190mと権現山1158mです。その右奥に
伊吹山1377mが薄く見えています。ちょうどダム湖の後方です。その右手前には貝月山1234mとブンゲン1260mです。




伊吹山 H
その伊吹山を望遠で。距離は38kmほど。手前に完全に重なりながらも国見岳1126mが尖っています。右手前は貝月山1234m。
伊吹の左後方は、鈴鹿の霊仙山です。確かにかつて、霊仙山からこちら能郷白山を眺めました。




その右側 H
上の写真の右、すなわち南西方向です。最後部にどっしりと構えているのは金糞岳1317mです。
その右手前の鋭鋒は蕎麦粒(そむぎ)山1297m。金糞岳の左手前は黒津山1193m。




「B合目」
藪の中にB合目の表示が。まだ距離的に半分も来ていません。なのに、暑さでふらふらします。



前山が近づく I
右に前山の山頂が近づいてきました。ルートは山頂を通らずに左を越えていきます。もはや日陰を作る樹木はなく、酷暑になってきました。



磯倉 I-J間
前山の山頂横を過ぎて能郷白山との吊尾根に乗りました。左に磯倉1541mの姿が目に飛び込んできました。磯倉は滋賀から見ても能郷白山のすぐ隣の鋭鋒としてよく目立ちます。



能郷白山 I-J間
そしてその右に、初めて全容を現してくれた能郷白山です。右端が山頂。その少し左に能郷白山神社奥宮の祠が確認できます。



「C合目」
やっと登山口からの距離は山頂までの距離を超えてくれました。でも、この距離配分なら六合目と言ってくれてもいいんですが・・・



吊尾根上の道 I-J間
吊尾根上は傾斜は緩いのですが、草がはびこってけっこう歩きづらいものがありました。



荒島岳 J
Jあたりで右前に荒島岳1523mの姿が確認できました。深田久弥が能郷白山と比較し、悩んだ末に百名山に選んだのがこちら。少し因縁を感じます。



近づく山頂 J-K間
ここらあたりから最後の急登が始まります。あいかわらず草がすごいです。



「D合目」
最後の号目表示、「D合目」です。あと500mですから、実質は九合目。確かに中途半端な号目表示ですね。このことは
「ヤマケイ・アルペンガイド22、鈴鹿・美濃」にも触れてあって、「能郷谷からのコース標識は五合目までしかない変則で、
五合目から頂上までの距離はさほど長くない。」と書かれています。どうしてこうなったのかは書かれていません。




草の中の登り J-K間
キオン、ヨツバヒヨドリなどの花をかき分けて登ります。ものすごい草いきれです。



前山を振り返る J-K間
山頂への急登から振り返ると、さっき越えてきた前山が既に下に見えました。



一等三角点 K
草丈が低くなってきたら、山頂部は間近です。分岐で左をとれば祠、右をとれば山頂。まずは山頂へ。一等三角点、「能郷白山」です。標高は1617.4m。



奥宮祠へ K
山頂から見た能郷白山神社奥宮の祠。山頂はほとんど眺望がないので、祠に移動します。祠の左には蕎麦粒山。



奥宮祠 L
移動してきました。右奥が山頂です。下る前にここからの眺望を楽しみたいと思います。




能郷白山神社奥宮の祠Lからの眺望


西北西
西北西には越美国境稜線が続きます。中央には冠山、金草岳、若丸山が見えますが、これらは次の写真で説明します。キアゲハの左下、
かすかに見えている鋭鋒は武生付近の名山、日野山794mではないでしょうか?金草山の左には越美国境の無名峰1143mが続きます。




金草岳、冠山、若丸山
中央で鋭く尖るのが冠山1257m。その左後方が金草岳1227mです。金草岳の右手前は白倉岳1200mというそうです。冠山の二つ手前の
少し左寄りは若丸山1286m。金草、冠、若丸三山がほぼ一直線上に並んでいます。標高の高いところから見ているので、標高が高くても
手前の山は下に見えます。そんなわけで、最も高い若丸山が一番低く見えています。若丸山と冠山の間の右寄りには無名の1262m峰。




西
カメラを少し左に振ってほぼ真西です。右端が2枚上の越美国境上の1143m無名峰です。その左、丸い峰は越美国境
より手前にある釈迦嶺1175m。さらに左は国境に戻って1169m峰、一回下がって笹ヶ峰1285mと続きます。




西南西
さらに左、西南西方向です。写真ほぼ中央にたくさんの山が重なっています。手前から千回沢山1246m、不動山1240m、越美国境の美濃俣丸1254mです。
そこから国境を右に振ると、大河内山1288m、夏小屋丸1294m、そして上の写真の左寄りに見えていた笹ヶ峰1285mです。逆に、左には、薄く見える山の左が三周ヶ岳1292m、さらに左が
高丸1316mです。さて、美濃俣丸と三周ヶ岳の間に薄く見える峰は、どうやら越前-近江国境の上谷山1197mのようです。こんどはトンボが左上を飛行中。虫も多い山頂でした。




南西
南西方向です。右端は高丸1316m。その左に烏帽子山1242m。この二峰は国境稜線の手前です。このあたりの国境稜線は低くて
三国岳などは高丸の陰で見えません。さらに左に目をやると、少し薄い目の大きな山が見えてきます。これは近江の横山岳1132m。向こうから
こちらを眺めた日を思い出します。その左は猫ヶ洞1065m、大ダワ1068mなどの美濃-近江国境の山々。手前の台形はホハレ峠付近の1076m無名峰。




南南西
その左には、先ほど登りの尾根からもよく見えた鋭鋒・蕎麦粒(そむぎ)山1297m。そして左奥は金糞岳1317mです。左手前にこれも鋭鋒の磯倉1541mが見えてきました。
その左後方、だんだんと見えづらくなってきましたが、ブンゲン1260mと貝月山1234mが並んでします。ブンゲンの右手前は天狗山1149m。これと蕎麦粒の間が黒津山1193m。




蕎麦粒山と金糞岳
この二山を望遠で。蕎麦粒の左には小蕎麦粒山1230m。金糞の右には白倉ノ頭1271m。金糞岳の手前は湧谷山1080mです。



能郷谷
登ってきた能郷谷を見下ろします。


南東方面
南東は、右手前に前山。その後方、右端は舟伏山1040m。その左は高屋山1136mとその続きの峰々(最高点は1234m)。
その左、小さな黒い台形は日永岳1216m。その間、はるか遠くに高くそびえるのは、どうやら恵那山2191mのようです。ほぼ100kmの距離です。




部子山と銀杏峯
今度は北北東の方向。こちらにはおおらかな山容を持つ二峰が。左が部子山(へこさん)1464m。右が銀杏峯(げなんぽ)1441m。
この右には荒島岳や白山方面が見えるはずなのですが、能郷白山の山頂に隠れて見えませんでした。徐々に雲も増えてきました。




登山道で見た花


フシグロセンノウ C
初秋に咲くナデシコ科の赤い花、フシグロセンノウです。登山口C付近で。



ヤマアジサイ D
最初の林道から登山口、尾根の登り初めにかけて咲いていました。花はコアジサイに似ていますが大きくて、装飾花があります。



ミズキの実 G
南東稜に入ると結構ありました。まだ群青色に完熟していません。



マルバダケブキ H
前山手前の尾根で咲いていました。高山でも見る花です。



キオン K
山頂周辺で多く咲いていました。



オオバギボウシ K
山頂周辺にて。



ニッコウキスゲ L
山頂の祠近くで。



トリアシショウマ L
山頂付近の草地で。



シモツケソウ L
ピンクがよく目立ちます。



山行記録:日時−2015年8月15日、天候−快晴。5:57 林道ゲート手前の空地P@に駐車後出発、6:59 登山口C到着。休憩後、7:13 登山口C出発、7:46 「@合目」、7:59 林道出合F、8:36 能郷白山の南東稜線に出るG、8:37 「A合目」、9:15 見晴らしのいいポイントH、9:42 前山・山頂横を乗越す、9:51 「C合目」、このあたりで15分ほど休憩。10:22 右前方に荒島岳を見る、10:41 「D合目」、11:14 能郷白山・山頂K着。昼食、休憩後、11:43 奥宮祠L前に移動して、写真撮影。11:49 Lから下山開始、12:25 「D合目」、13:03 「C合目」、13:26 「B合目」、14:04 「A合目」、14:34 「@合目」、15:00 登山口手前の渡渉点D着。休憩後、15:15 D発、15:16 登山口C、16:11 駐車地P@着。

 お盆の終戦記念日、近くのうすずみ温泉の道の駅で車中泊して、6時前に能郷谷の林道ゲート前@まで車でやってきました。青空がきれいで、いいお天気になりそうな、そんな日でした。いつもなら晴れると喜ぶのですが、今回は最初から酷暑が予想されているだけに、内心雲が多いほうがいいのになぁ、でも眺望はあってほしいなぁ、などと勝手なことを考えていました。
 ぼくの持っているガイドブックではすべて登山口まで車で行けることになっていますが、林道の通行止めがあることはネット情報等で確認済みでした。さて、林道ゲートから歩き始めると、しばらくで、車はとても通れない状況がよくわかりました。大きな石が転がっていたり、左からの流れが土砂とともに道を半分塞いでいたり。その先、右岸から左岸に渡って間もなく、橋が完全に流されており、その部分は当然林道ではなく、砂利の細道となるわけですが、そこで既に草ぼうぼうの状態でした。もうすぐ歩くのに支障が出てきそうなぐらい、道が荒れてきておりました。この能郷谷から登るルートは、能郷白山の歴史ある道なのですが、温見峠からのルートができて以来、どうもそちらがメインルートに変わってしまったみたいです。登山口から山頂までの距離がちょうどこちらの半分で済みますし、おまけにこんな林道歩きもない。まあ、人気がそっちに行ってしまうのはしかたがないところでしょう。ただ、この夏は「酷道」で有名な157号線が、本当に崩壊して岐阜側から温見峠に上がれません。福井側から上がることになるので、滋賀からは遠回り。それに、一回はやはり歴史のあるこのルートを登ってみたいというのもどこかにあって、こっちを登ることに。
 林道歩きちょうど1時間で登山口に着きました。標高も382mから716mまで、330m余、登ってきました。この間、ウシアブの襲来にはけっこうてこずりました。登山口Cからは、まず能郷谷の渡渉が待っています。この日も前日午前まで雨が来ていたので、かなりの水音がしており、渡渉できるかが心配でした。でも、現場を見てみると、飛び石がちゃんと流れの上に出ていたので、問題なく渡れました。次にいきなりの急登り。しかも、かなり続きます。ただ、まだブナなどの樹が大きく、しっかりした森の中の登高なので、木漏れ日しか浴びません。
 標高が1000mを超えて、廃道化した林道に出合ってから上は、大きな樹木がまばらになり、直射日光が遠慮なく、体に当たってきました。これには、ちょっと驚きました。標高1400mぐらいまではしっかりした森があるだろうとふんでいたからです。時折木陰に逃げ込むようにしながらの急登は続き、汗が噴き出してきました。ここからはひたすら耐えながらの登りです。しかも前山を過ぎるまではかなりの急登が続きました。道の草もこのあたりからかなり密に生えこんで、背丈もかなり高いのが増えてきました。かといって、日陰は作ってくれないので、急登と日射と藪漕ぎの三重苦が始まりました。前山の横を通過して、ようやく傾斜は緩み、下り基調になってきました。このへんで大休憩をとりました。
 吊尾根の最低鞍部(標高1410m)を過ぎてから、再び急登となり、山頂まで最後の標高200mを登っていきます。草はさらに濃くなり、日射も相変わらず。あえぎながらなんとか標高を稼ぎ、登山口からちょうど4時間後、標高1617mの山頂に着きました。ガイドブックの標準が休憩無で3時間半ですから、この時期としてはじゅうぶんでしょう。
 山頂には一等三角点がありますが、眺望はまったくありません。そこで、奥宮祠のほうに移動しました。こちらは、上に写真を出したように、北北西〜南〜東南東までは、よく見えました。ただ、荒島岳や白山方面はここからも見えません。山頂から温見峠方面に少し下らないと見えないようです。まあ、荒島岳は登りに見たし、白山は雲のせいでどうせ見えなさそうだったので、そこまではしませんでした。眺望ではやはり冠山と蕎麦粒山の凛々しく聳える姿、金糞岳の巨体が目を引きました。ただ、かすかに見えた上谷山、横山岳、そして恵那山も感動的でした。
 下山後は、うすずみ温泉にゆっくり浸かって、ノンアルコールのビールを流し込んだことは言うまでもございません。草の中をずいぶん歩いてきたのでマダニなどがくっついてないかも調べましたが、大丈夫でした。

MAP


この地図は国土地理院発行の地理院地図をベースに作成いたしました。

図中の番号は上の写真と対応しています。